地域おこし協力隊としてのスタートと、“レク”との出会い
地域おこし協力隊としてこのまちに着任したのは、春の風が少しずつ柔らかくなりはじめた頃。
まだ朝晩は冷えますが、通りの桜のつぼみがふくらみ、まち全体が新しい季節を迎える準備をしているように感じました。
正直に言えば、最初の数か月は戸惑いの連続で、知らない土地や人々に少し緊張しながら挨拶して回る毎日。
そんな私を地域の人たちは温かく迎えてくれて、「何か一緒に楽しいことができるといいね」と笑顔で声をかけてくれました。
その「楽しいこと」という言葉が、私の中でずっと心に残りました。
どうやったらみんなが笑顔で過ごせる時間を作れるのか――そんな思いが募っていきました。
そこで出会ったのが「レクリエーション」という考え方です。
最初は、ただの遊びの延長のように思えました。
でも調べてみると、レクリエーションは「人と人をつなぐコミュニケーションの場」であり、「心の健康を支える活動」でもあることが分かりました。
その瞬間、「これだ」と直感しました。
地域の人たちが笑顔でつながる時間を作りたい――そう自然に思えたのです。
資格を取ろうと思ったきっかけ
活動が進む中で、子ども会や高齢者サロン、地域イベントの手伝いなど、さまざまな場面でレクリエーションを企画する機会が増えました。
でも、思うように盛り上がらないこともあったりと悩むことがありました。
子ども向けのゲームでは、途中で飽きてしまう子が出ることもあります。
お年寄り向けの体操では、笑顔よりも「疲れた」という声のほうが目立つこともありました。
「自分のやり方が間違っているのかもしれない」
そんな思いが頭をよぎったとき、他地域の協力隊員が「レクリエーションインストラクター」の資格を持っていることを知りました。
話を聞くと、資格には心理面や安全面、コミュニケーションの技術までしっかり学べる内容があるとのこと。
それを聞いたとき、「あ、これなら自信を持って活動できるかもしれない」と希望がわきました。
ただ楽しく過ごすだけでなく、参加者が安心して笑顔になれる空気を作る力を身につけられる――
その魅力に惹かれ、資格取得に挑戦する決心をしました。
学びのスタート──半年間の集合学習と現場体験
資格取得の勉強は、半年間にわたる集合学習で行いました。
月に数回会場に集まり、講師の先生や仲間たちと机を並べて学ぶスタイルです。
初回のオリエンテーションでは、緊張で少し固くなった自分の肩の力を、受講生の明るい挨拶がすっとほどいてくれました。
「やってみよう」と自然に思える瞬間でした。
講義では、まずレクリエーションの基礎理論を学びました。
「レクリエーションとは何か」「なぜ人は遊びを通して生きがいを感じるのか」――
難しそうな問いも、講師の具体例や地域活動の話と重ねて説明してもらえると、すっと理解できました。
「レクリエーションは、遊びそのものではなく、人が心を取り戻す時間です」
その言葉が心に染み、これまで自分が感じていた“笑顔の力”とつながった瞬間でもありました。
実技の授業も、毎回新しい発見の連続です。
身体を動かすゲームや道具を使った遊び、グループでの進行練習など、学ぶことが盛りだくさんでした。
さらに、何度か実際のレクリエーションイベントにも参加する機会があり、座学では得られない“場の空気感”や“参加者の反応”を肌で感じることができました。
もちろん失敗もあります。
進行がうまくいかず慌ててしまったり、グループワークで意見がまとまらなかったりすることもありました。
でも、仲間と振り返って「次はこうしてみよう」と笑い合う時間が、何より貴重な学びになりました。
半年間を通して、レクリエーションとは「人との関わりを育む学び」なのだと、体で感じられるようになったのです。
座学で知識を得るだけでなく、現場で体験することの大切さを実感しました。
合格までの道のり
理論は半年間の学びで身につけた知識を活かせましたが、実技は緊張の連続でした。
「ゲームの進行」「声かけ」「安全配慮」「参加者を巻き込む雰囲気づくり」――
どれも思っていた以上に難しく感じます。
練習中、説明が長くなったり、声が小さくなったりすることもありました。
でも「相手に伝わるように話すこと」を意識すると、少しずつ反応が変わってくるのが分かりました。
参加者の笑顔を見るたびに、自然と自分も笑顔になっていくのです。
半年間の講習やイベントへの参加を経て、後日届いた合格通知に思わず胸が熱くなりました。
「やっと一歩前に進めた」と、そう実感できた瞬間です。
資格を活かした活動──現場で生きた“学び”
資格を取得してから、レクリエーションの見え方が大きく変わりました。
以前なら“楽しく過ごせればいい”と思っていた時間も、今は「どんな時間にしたいか」を意識できるようになりました。
子どもたちと遊ぶときは、ルールの中に「思いやり」や「協力」を組み込みながら進めます。
お年寄りとの活動では、体を動かす時間だけでなく、話を聞く時間を大切にしました。
そうすると、自然に笑顔が増えていくのが分かります。
「今日は楽しかったよ」
「またやってね」
そんな言葉をもらえると、次の活動も頑張ろうという気持ちになります。
レーザー加工機がくれたサポート
イベントの準備で悩むのは、特にクラフト素材づくり。
紙を切ったり厚紙を型抜きしたりと、夜遅くまで作業が続くこともありました。
そんなとき、大きな力になったのが”レーザー加工機”でした。
最初は半信半疑でしたが、使ってみるとびっくり。
細かいパーツもきれいにカットでき、作業時間がぐんと短くなります。
同じ図案をたくさん作るのも、手間を感じずに進められました。
ハロウィンイベントでは、レーザーで作った木のタグに子どもたちが色を塗って「マイおばけバッジ」を作りました。
仕上がったバッジを胸につけて走り回る子どもたちの笑顔に、自然と私も笑顔になりました。
「機械の力で、人の笑顔が広がる」
そんなことを改めて感じた瞬間です。
資格を取ってよかったと思うこと
資格を取得して一番よかったのは、自分に自信が持てたこと。
最初は「本当にできるのかな」と不安でしたが、知識と経験を積むうちに、少しずつ自分らしいレクリエーションを作れるようになっていきました。
地域の人たちとの関係も変化しました。
「今度のイベント、また手伝ってくれる?」
「次はどんな遊びをするの?」
と声をかけてもらう機会が増え、地域の中で頼られる存在になれたような気がします。
レクリエーションインストラクターに挑戦する人へ
資格を取ったことで活動の幅は広がりましたが、ここがゴールではありません。
地域おこし協力隊の活動だけにとどまらず、子どもやお年寄りなど色々な人々の笑顔や元気づくりに活かしていきたい。
みんなで集まって笑い合える時間を大切にしていきたいです。
これからレクリエーションインストラクターを目指す方には、
「取得までの道のりはちょっとばかり長いけれど、その先にはたくさんの笑顔が待っている」と伝えたいです。
資格は“紙の証明”ではなく、“人の心を動かす力”を学ぶもの。
その学びを現場で活かしたとき、活動がぐっと温かく、楽しいものに変わっていきます。
人を笑顔にする力を学んで、自分自身も笑顔になれる。
そんな経験に出会えたことを、心からうれしく思います。
おわりに
振り返ると、資格を取ろうと思ったきっかけは、
「もっと上手に人を笑顔にしたい」という思いでした。
でも、気づけば私自身も、たくさんの人に笑顔にしてもらっていたのかもしれません。
レクリエーションを通じて誰かが笑顔になる瞬間は、何よりも大きな喜びです。
これからも、楽しさの輪を広げながら、
一人でも多くの人が笑顔になれる時間を作っていきたいと思います。



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